ルカの福音書1章1節~4節
先週の講壇をもって、『 使徒の働き 』 の56回連講を終え、今朝から、同じ記者ルカによって届けられた福音書の連講に入る。今朝は初回ですので、聖書のみことばを味わって行く今後の備えの為に、『 ルカの福音書 』 の書かれた目的、執筆時期、四つの福音書中ルカならではの特色の学びを。
① この書が書かれた経緯、その目的。
『 ルカの福音書 』 は、『 使徒の働き 』 の冒頭、1章1、2節で「テオピロよ。私は前の書で・・・について書き・・・」との説明があった。この「前の書」である 『 ルカの福音書 』 1章1~4節では、これらのすべてが、初めからの目撃者たちによる証言であり、ルカも「すべてのことを初めから綿密に調べて」いること、「順序を立てて書いて」いると伝えている。
この時点で 『 ルカの福音書 』 の特異性を見るが、『 使徒の働き 』 同様、個人名を名指しで「テオピロ殿」と書き出し、「尊敬する」と【『 使徒の働き 』 では、ユダヤ総督ペリクスやフェストを「閣下」と呼んだのと原語を同じくする言葉】まで呼んでいるからには、何処でどのような関係性があったのか、興味深い。
ルカは異邦人でアンテオケ出身。テオピロも同じアンテオケ市民で、ユダヤ総督同様、ローマ社会における高位の貴族で、教会の為に彼の広い家を開放していたと言われている。
ルカがテオピロの為に「順序を立てて書いて差し上げるのがよい」としたのは、異邦人への福音宣教を考慮し、その為に影響力のある 《 彼が福音を正しく理解し、経験し、神との正しい関係に立つことが必須である 》 と考えたからなのでは !!
② ルカはいつ、この書を書いたのだろうか ?
ルカの名前が出て来るのは、新約聖書中三か所。
パウロがローマでの最初の獄中生活で、ルカと共にいた時に書いた ※ コロサイ人への手紙 4章14節では「愛する医者ルカ」と、ピレモンへの手紙 24節では「私の同労者・・・ルカ」とある。その後、パウロは釈放されてスペインに行くが再度捕らえられ、ローマでの二度目の獄中生活に服し、その時書き送られた ※ テモテへの手紙 第二 4章11節では「ルカだけは私とともにおります」とある。
ルカは生涯、使徒パウロと辛苦を共にし、福音の為に生涯をかけた人物である。従って、使徒たちの働きと共に生きたルカの生涯を知るのには、『 使徒の働き 』 を他にしてない。
『使徒の働き 』 を学んだ時に、「私たち」とある部分は 《 記者ルカが同行している 》 ことを伝えていると、少し触れました。
使徒の働き 16章9~18節 ⇒ 第二次伝道旅行中のパウロの一行がトロアスに導かれた時、そこにルカが居合せた。ここから同行して、ピリピまで行く。ルカはこのピリピに留まった。後、「私たち」が出て来るのは、第三次伝道旅行の帰路、ピリピに立ち寄ったパウロと再度合流し、20章6節 「私たちはピリピから船出し」、エルサレムに着くまで、パウロと同行したことが分かる。 ⇒ 21章17節 「エルサレムに着くと、兄弟たちは喜んで私たちを迎えてくれた」と。
このエルサレム到着から、次に出て来る「私たち」は、27章1節 「さて、私たちが船でイタリヤへ行くことが決まったとき」とあるパウロ念願のローマ行きの時。その間パウロはカイザリヤで二年間の拘置生活、ルカは単独行動。
恐らく、このローマ行きまでの二年間、1章3節 「綿密に調べておりますから」という 『 ルカの福音書 』 の執筆の為に、過ごしたのではと考えられている。彼の「綿密に調べております」と言った姿勢があったからこそ、他の福音書では知ることの出来ない記事に、その実を見たと言って良いのではないか。
③ 『 ルカの福音書 』 ならではの特色について。
四つの福音書には、それぞれ特色があり、ヨハネは他の三つと趣を異にしているので、補足的な意味で、第四福音書として区分されている。残る三つの福音書は、比較的平行記事が多いことから、 《 共観福音書 》 と言われているが、この 『 ルカ 』 には独自の記事が収められていることに気付く。
( 1 )主の先駆者ヨハネの誕生と、キリストの誕生の物語。恐らく、主の母マリヤから直接聞いたと考えられる。従って、主の少年時代のエピソードも貴重な記事。
( 2 )福音が異邦人に及ぶことの強調。2章1節 「そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た」との歴史的事実の裏付けを与えつつ、シメオンの言葉( 2章28~33節 )、バプテスマのヨハネの言葉( 3章6節 )、「罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に・・・。 24章47節」と。
( 3 )失われた者に対する主の関心。サマリヤ人への偏見を戒め( 10章33、34節 )、15章では、放蕩息子と兄息子の罪の事実の何なるかを伝え、罪深さを痛んで祈る取税人への顧み( 18章13、14節 )、十字架上で主の憐れみを求める強盗への言葉掛け( 23章39~43節 )。
( 4 )当時社会的立場の低かった女性に対する主の関心。先ずは、不妊の女性エリサベツの登場から始まり、母マリヤの選び。幼子イエスのことを語った女預言者アンナ。罪深い女を弁護( 7章36節~ )。主の伝道の働きを、財を以って支えた女性たちに言及( 8章2、3節 )。
( 5 )富める者と貧しい者との関係に言及。主の誕生の知らせをいち早く知らされた人々が、野宿する貧しい羊飼いであったこと( 2章8、9節 )から始まり、愚かな金持ち( 12章13~21節 )、金持ちと貧乏人ラザロ( 16章19~31節 )、財産を放棄して救いを経験した取税人ザアカイ( 19章8節 )など、主が如何に貧しい者と共におられたか。
( 6 )主が祈られた九つの祈りの内、七つがここにあり、祈りに関する教えとたとえで満ちている。
( 7 )聖霊の働きについて顕著で、『 使徒の働き 』 に続けている。
( 8 )賛美と喜びに満ちている。マリヤの賛歌( 1章46~55節 )、ザカリヤの賛歌( 1章67~79節 )、御使いたちの歌( 2章13、14節 )、シメオンの賛歌( 2章28~32節 )。15章の羊飼いのたとえ( 7節 「ひとりの罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人にまさる喜びが天にあるのです」 )に父なる神の喜びが伝えられている。最後の24章に至っては、「彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、いつも宮にいて神をほめたたえていた」で閉じられている( 52、53節 )。
※ ルカに倣い、互いも又、聖書を綿密に学んでいきたい。
先週の講壇をもって、『 使徒の働き 』 の56回連講を終え、今朝から、同じ記者ルカによって届けられた福音書の連講に入る。今朝は初回ですので、聖書のみことばを味わって行く今後の備えの為に、『 ルカの福音書 』 の書かれた目的、執筆時期、四つの福音書中ルカならではの特色の学びを。
① この書が書かれた経緯、その目的。
『 ルカの福音書 』 は、『 使徒の働き 』 の冒頭、1章1、2節で「テオピロよ。私は前の書で・・・について書き・・・」との説明があった。この「前の書」である 『 ルカの福音書 』 1章1~4節では、これらのすべてが、初めからの目撃者たちによる証言であり、ルカも「すべてのことを初めから綿密に調べて」いること、「順序を立てて書いて」いると伝えている。
この時点で 『 ルカの福音書 』 の特異性を見るが、『 使徒の働き 』 同様、個人名を名指しで「テオピロ殿」と書き出し、「尊敬する」と【『 使徒の働き 』 では、ユダヤ総督ペリクスやフェストを「閣下」と呼んだのと原語を同じくする言葉】まで呼んでいるからには、何処でどのような関係性があったのか、興味深い。
ルカは異邦人でアンテオケ出身。テオピロも同じアンテオケ市民で、ユダヤ総督同様、ローマ社会における高位の貴族で、教会の為に彼の広い家を開放していたと言われている。
ルカがテオピロの為に「順序を立てて書いて差し上げるのがよい」としたのは、異邦人への福音宣教を考慮し、その為に影響力のある 《 彼が福音を正しく理解し、経験し、神との正しい関係に立つことが必須である 》 と考えたからなのでは !!
② ルカはいつ、この書を書いたのだろうか ?
ルカの名前が出て来るのは、新約聖書中三か所。
パウロがローマでの最初の獄中生活で、ルカと共にいた時に書いた ※ コロサイ人への手紙 4章14節では「愛する医者ルカ」と、ピレモンへの手紙 24節では「私の同労者・・・ルカ」とある。その後、パウロは釈放されてスペインに行くが再度捕らえられ、ローマでの二度目の獄中生活に服し、その時書き送られた ※ テモテへの手紙 第二 4章11節では「ルカだけは私とともにおります」とある。
ルカは生涯、使徒パウロと辛苦を共にし、福音の為に生涯をかけた人物である。従って、使徒たちの働きと共に生きたルカの生涯を知るのには、『 使徒の働き 』 を他にしてない。
『使徒の働き 』 を学んだ時に、「私たち」とある部分は 《 記者ルカが同行している 》 ことを伝えていると、少し触れました。
使徒の働き 16章9~18節 ⇒ 第二次伝道旅行中のパウロの一行がトロアスに導かれた時、そこにルカが居合せた。ここから同行して、ピリピまで行く。ルカはこのピリピに留まった。後、「私たち」が出て来るのは、第三次伝道旅行の帰路、ピリピに立ち寄ったパウロと再度合流し、20章6節 「私たちはピリピから船出し」、エルサレムに着くまで、パウロと同行したことが分かる。 ⇒ 21章17節 「エルサレムに着くと、兄弟たちは喜んで私たちを迎えてくれた」と。
このエルサレム到着から、次に出て来る「私たち」は、27章1節 「さて、私たちが船でイタリヤへ行くことが決まったとき」とあるパウロ念願のローマ行きの時。その間パウロはカイザリヤで二年間の拘置生活、ルカは単独行動。
恐らく、このローマ行きまでの二年間、1章3節 「綿密に調べておりますから」という 『 ルカの福音書 』 の執筆の為に、過ごしたのではと考えられている。彼の「綿密に調べております」と言った姿勢があったからこそ、他の福音書では知ることの出来ない記事に、その実を見たと言って良いのではないか。
③ 『 ルカの福音書 』 ならではの特色について。
四つの福音書には、それぞれ特色があり、ヨハネは他の三つと趣を異にしているので、補足的な意味で、第四福音書として区分されている。残る三つの福音書は、比較的平行記事が多いことから、 《 共観福音書 》 と言われているが、この 『 ルカ 』 には独自の記事が収められていることに気付く。
( 1 )主の先駆者ヨハネの誕生と、キリストの誕生の物語。恐らく、主の母マリヤから直接聞いたと考えられる。従って、主の少年時代のエピソードも貴重な記事。
( 2 )福音が異邦人に及ぶことの強調。2章1節 「そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た」との歴史的事実の裏付けを与えつつ、シメオンの言葉( 2章28~33節 )、バプテスマのヨハネの言葉( 3章6節 )、「罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に・・・。 24章47節」と。
( 3 )失われた者に対する主の関心。サマリヤ人への偏見を戒め( 10章33、34節 )、15章では、放蕩息子と兄息子の罪の事実の何なるかを伝え、罪深さを痛んで祈る取税人への顧み( 18章13、14節 )、十字架上で主の憐れみを求める強盗への言葉掛け( 23章39~43節 )。
( 4 )当時社会的立場の低かった女性に対する主の関心。先ずは、不妊の女性エリサベツの登場から始まり、母マリヤの選び。幼子イエスのことを語った女預言者アンナ。罪深い女を弁護( 7章36節~ )。主の伝道の働きを、財を以って支えた女性たちに言及( 8章2、3節 )。
( 5 )富める者と貧しい者との関係に言及。主の誕生の知らせをいち早く知らされた人々が、野宿する貧しい羊飼いであったこと( 2章8、9節 )から始まり、愚かな金持ち( 12章13~21節 )、金持ちと貧乏人ラザロ( 16章19~31節 )、財産を放棄して救いを経験した取税人ザアカイ( 19章8節 )など、主が如何に貧しい者と共におられたか。
( 6 )主が祈られた九つの祈りの内、七つがここにあり、祈りに関する教えとたとえで満ちている。
( 7 )聖霊の働きについて顕著で、『 使徒の働き 』 に続けている。
( 8 )賛美と喜びに満ちている。マリヤの賛歌( 1章46~55節 )、ザカリヤの賛歌( 1章67~79節 )、御使いたちの歌( 2章13、14節 )、シメオンの賛歌( 2章28~32節 )。15章の羊飼いのたとえ( 7節 「ひとりの罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人にまさる喜びが天にあるのです」 )に父なる神の喜びが伝えられている。最後の24章に至っては、「彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、いつも宮にいて神をほめたたえていた」で閉じられている( 52、53節 )。
※ ルカに倣い、互いも又、聖書を綿密に学んでいきたい。
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